会社説明会は、学生にとって「その会社を最初に知る大切な場」です。だからこそ人事担当者は、自社の魅力を丁寧に伝えようと準備を重ねます。しかし、「説明会がまるで説法を聞かされているようだった」と学生から不満の声が出るケースも往々にしてあります。
具体的には、自社の理念を延々と話し続けるパターンです。理念自体は企業活動の根幹であり、伝えるべき大事な内容です。しかし、説明の仕方が抽象的で一方通行になってしまうと、学生は「自分ゴト」として受け止められず、「なんだか説教くさい」と感じてしまうのです。
では、どうすれば理念を“説法”ではなく“共感”に変えられるのでしょうか。
企業理念は、一見すると抽象的な言葉に見えます。しかし、その裏側には必ず「自社が大切にしているもの」という視点が隠れています。
たとえば、「人を大切にする」という理念。「よくある理念だよね~」と思うかもしれません。しかし、これらもよく考えてみましょう。なぜ「社会の発展に寄与する」ではなく、「自社で作る製品の価値」でもなく「人」なのでしょう?そこには必ず理由があります。
さらに、長く続いてきた企業であればあるほど、理念は単なる言葉ではなく、実際に現場で働く人たちによって日々実践されています。理念は空中に浮いているのではなく、「働く人の行動」として息づいているのです。
だからこそ説明会では、「なぜ、我々にとって“これ”は大切なものなのだろう?」を考え、その理由を学生に伝えることが求められます。
例えば、「人を大切にする」企業の理念の具体化に考えてみましょう。
理念を具体化するには、事業と人の関わりを結びつけて説明すると効果的です。
なにごとも「なぜ?」が大切です。その説明が一貫していればいるほど、学生は「なるほど」と腑に落ちやすくなります。
また、理念を具体的に伝えるには、「制度」「仕組み」「日常の取り組み」に結びつけて紹介するのも有効です。
例えば「オープンなコミュニケーションを大事にする会社」という理念なら、以下のような制度に表れます。
学生は抽象的な理念よりも、「実際にどんな場面でそれが体現されるのか」を知りたいのです。具体例を提示することで、理念が「言葉」から「行動」に変わり、学生の共感を得られます。
採用担当者から「うちには特別な制度なんてない」と聞くことがあります。
しかし、実際に掘り下げてみると、理念を支える仕組みは必ず存在します。
こうした日常の取り組みこそが、理念を具体的に表しているのです。特別な制度がなくても、「人を大切にしている瞬間」を切り取れば、学生に伝わるリアルなストーリーになります。
実際、理念を抽象的に語るだけの説明会では、こんな感想が寄せられます。
一方で、理念を人や制度に結びつけて語った企業に対しては、
といったポジティブな声が集まります。
会社説明会で理念を語ることは大切です。しかし、それが抽象的で一方通行になってしまうと、学生には“説法”のようにしか響きません。
理念を本当に伝えるためには、
理念を「押し付け」ではなく「共感」に変える。そのために、説明会のメッセージを学生目線で再設計することが求められています。
最後に
もし「理念を伝えたいのに学生に響かない」と感じているなら、それは伝え方の問題かもしれません。
理念を人や仕組みにひもづけてストーリー化することで、学生に「働く姿」が見え、共感を呼ぶ説明会に変えられます。