物流業界における2024年問題について、現状の整理や今後の課題などを多角的な視点から切り込んできた当コラム。遂に今回で最終回です。
前回のコラムでは既に現場で導入されている新しい試みや新システムについてお話ししました。最終回ではそれら”新ツール”、特に採用に特化したAirワークなどの応募者管理ツールを使いこなして人員確保に繋げるため、重要なポイントを押さえていきたいと思います。
理想としていた人材を採用できるか否かは、ツールを活用する上でのコツを知っているかどうかで決まると言っても過言ではありません。またこれから紹介するノウハウは、人材業界の第一線で活躍しているプロであれば誰もが大事にしているポイントでもあります。ぜひ、ご参考にしてみてください。
目次
まず「ペルソナ」という言葉が聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれません。「ペルソナ」とはサービス・商品の典型的なユーザー像のことを指します。転じて、採用のターゲット像としての意味で使われることが多い言葉です。Airワークをはじめとした求人に関するHPや広告を制作する際は、ペルソナを具体的に設定するところから始めてみてください。
そうすることでターゲット像がよりクリアになり、社内でも意識の統一が図れるほか、採用のミスマッチが起きにくくなるというメリットがあります。
では、例としてトラックドライバーに転職を考え得るペルソナ像を出してみましょう。
【ペルソナの設定例】
・佐藤太郎(26歳男性)
地元の高校を卒業後に上京して大学へ進学。学部は経済学部。
特に留年など無く4年間で卒業。手に職は無く、持っている資格は英検4級と自動車普通免許のみ。
・独身で1人暮らし
大学時代から住んでいる千葉県内のワンルームマンションに住んでいる。
車が好きで、都内では駐車場代が高いため学生時代から千葉に住んでいる。
・フリーター(現在2年目)
大学を卒業後、営業職で新卒入社した会社は自分に合わず2年で退職。
その後は転職活動をしつつも、飲食店でアルバイトとして働いている。
休みの日は月2日ほどフードデリバリーもやっている。
・給料は月収23万円
フルタイムではあるが飲食店だけでは厳しい。フードデリバリーの分を追加してもこのくらい。
さすがにそろそろ先を見据えた仕事を探しているが、キャリア・資格の面で思うように行っていない。
・趣味はゲーム、ドライブ
休日は家でゲームをしていることが多い。好きなジャンルはアクション・サバイバル系が中心。
ドライブは最近の燃料の高騰もあり控え気味。
もう少し充実した休日を送りたいので、もっと稼げる仕事を探している。
以上、いかがでしょうか。ペルソナは詳細に設定すればするほど、採用における戦略が立てやすくなります。仮に上記のように設定した場合、人物像を通じて以下のような見通しがつくのではないでしょうか。
【ペルソナから考えられること】
・フリーター(現在2年目)
→キャリアを積んで転職も視野に入れている時期。ただ、現職は立ち仕事が多く、
同じ体力を使う仕事ならもっと稼げることをしたいと考えているかもしれない。
・給料は月収23万円
→現職の仕事では収入の限界を感じている。転職先を選ぶ基準で最も重視しているのは雇用形態(正社員)。
ただ、稼げること・仕事内容の魅力によっては契約社員やアルバイトも候補から外していない。
また、フードデリバリーをやっていて、フリーランス(個人事業主)も考えていそう。
・趣味はゲーム、ドライブ
→チームより1人でコツコツと業務を行う方が好きな人柄かもしれない。
またドライブが趣味ということからも、運転が多い仕事が苦にならない可能性が高い。
このように、ペルソナを設定することで求職者に優先して伝えるべき打ち出しや制作物の方向性が決まってくるかと思います。さらに言えば残業が多くても良いから稼ぎたい方、プライベートとのメリハリを大事にしたい方などでも選別すべき情報は変わってくるでしょう。
また「トラックドライバー」と言っても大型・中型・平ボディ…など種類は様々ですし、必要な免許も運ぶ荷物も異なります。求職者の興味や特技から、こうした面からもより緻密に情報を選定できるでしょう。
ペルソナを設定し、ターゲットに確実に刺さる広告内容にすること。これが、採用成功の一歩になると言えます。
自分の生まれ育った街や、出身地以外の土地を敢えて選んで就職すること。
これらは一般的にUターン・Iターンと呼ばれています。ご存知の方も多いのではないでしょうか。
実はこのUIターン、自治体によって採用活動の経費に応じた助成金が支給されることがあります。採用コストの削減にも繋がりますし、新たな門出を応援するという打ち出しもしやすいのは大きなメリットです。実際に大手求人メディアでは、UIターン特集を組まれる機会も多くあります。
さらにあるデータによれば「実家から通勤したい」、「友人が多い地元の方が安心する」、「子育てや介護など将来のことを考えて親の近くに住みたい」など、進学する土地とは関係なく、Uターンを検討する若年層は半数以上という結果が出ています。同時に「自分の好きな街で働きたい」とIターンを検討している層も存在します。こうした人々をU・Iに分けてターゲット設定することも、ひとつの効果的な手段です。
Uターンであれば「地元で腰を据えて長く活躍できる」、Iターンであれば「家賃補助あり」などの文言やメリットに絡めるとより求職者に魅力的に伝わるでしょう。
他にも打ち出しで大切なのが、設備・待遇・環境やオリジナルの手当などを盛り込むことです。
ドライブレコーダーやハンズフリーフォンの搭載など、もしもの時の備えが万全であることはリスク管理の意識が高い企業であるとアピールできます。また近年では「無事故手当の支給」などの”業界ならでは”の待遇を揃える企業も増えたため、こうした手当をアピールすることはモチベーションが保てる環境であると間接的に伝わります。また同時に、こうした手当は臨時収入として手元に残るので、仕事への満足度にも繋がることがわかるでしょう。他にも、Iターンの場合は寮完備なども応募への後押しになったりもします。
求職者が未経験の場合、初めての業界に経験・知識ゼロから飛び込むことに不安を感じている方がいらっしゃるかもしれません。そのような場合は研修の説明や、同じ境遇だった先輩や仲間の体験談、サポート体制の充実さなどを打ち出して、温かく迎えてもらえる環境というのを伝えることで、求職者の親近感や安心感に繋げられます。
これはどの仕事でも言えることですが、具体的なエピソードを盛り込むことは、より説得力も増して広告主企業ならではの魅力が伝わります。
全4回にわたり物流業界の2024年問題についてお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか。
物流業界と一括りにしても、実際に優先して解決すべき課題や注力すべき取り組みは、それぞれの企業で異なってくるかと思います。これまでのコラムをお読みいただき、弊社へご相談を希望される方はぜひお気軽にお問い合わせください。
弊社には全4回にわたってお伝えしてきた内容以外にも、物流業界で役立つ採用ノウハウがございます。今後、貴社のさらなる飛躍に繋がるように、ぜひ私たちにお手伝いをさせていただけますと幸いです。