心理学をビジネスに活かそう!(22)満場一致のパラドックス

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会議では、反対意見もなく、全会一致で決定したものの、皆の満足度が低い、あるいは、後に大きな問題が発生してしまう。ちゃんと話し合えば良かったなと後悔してしまったことはありますか。満場一致のはずの意思決定の、どこに問題があったのでしょうか。

■満場一致はかなり怪しい

会議などで一つの案に全員が賛成してしまう「満場一致」。一見、全員が賛同しているのだから、正しい決定のように感じます。ところが、満場一致する背景を考えると、実はかなり怪しい意思決定プロセスが考えられます。

●思考停止


もっともらしい案が提示されると、「それで良いのでは・・・」と感じ、つい賛成してしまうことがあります。本当に問題が無いのか、それが最善なのか、他の方策はないのか、じっくりと考え、議論することなく、何となく全員が賛成してしまうのは、何とも恐ろしいですよね。

●和を乱さない集団心理


気になる点もあるけど、反対意見を言ったら、怒られそう・・・。話が長引きそう・・・。余計なことは言わないで円満に進めたい。そんな心理が集団で働くと、批判的意見は出ないものですね。特に、経営トップや権威者の意見には反対意見は出しづらいものです。

●異論がなければ賛成とみなされる


会議の参加者一人ひとりの頭の中には、疑問や意見があっても、問題提起や発言が出なければ、賛成したものと認識され、満場一致の状態となってしまうことがあります。

■満場一致が怪しい理由

●P.F.ドラッガーも著書「プロフェッショナルの条件」の中でこう述べています。


『成果を上げるには、教科書のいうような意見の一致ではなく、意見の不一致を生み出さなければならない。満場一致を求めるようなものではない。相反する意見の衝突、異なる視点との対話、異なる判断の間の選択があって初めてよく行いうる。意見の不一致が存在しない時は、決定を行うべきではない』 ープロフェッショナルの条件(P.F.ドラッガー著)より引用ー

●確率論

じゃんけんで3連勝するようなことは、日常的によくあることです。


でも、10回中10回続けて勝つのは、おかしいですよね。誰もが、じゃんけんのやり方に不正がありそうだと怪しむのではないでしょうか。

そもそも、人の視点や考えは多少なりとも異なるものであり、統計学的にも満場一致の場合は、怪しい意思決定プロセスが潜んでいることが多いと言えそうです。

では、どうすればよいのでしょうか。


■満場一致の罠に陥らないために

●批判的思考を大切にする

「良い部下」の条件を2つ挙げるとすれば、「貢献力」と「批判力」ではないでしょうか。



組織の期待に応えるために努力して貢献してくれること。その一方で、与えられた指示や役割を問い直し自分の見解を主張すること。この2つをリーダーも、組織も、一人ひとりも大切にすることです。

むやみに批判するのではなく、一旦は何か問題は無いか、疑ってかかるということです。「クリティカル・シンキング」とも呼ばれます。

●心理的安全性を高める


「意見をありがとう」と称えるなど、異なる意見も一旦は受容れてくれる応対のしかたも大切です。権威や組織の圧力を出来るだけ排除して、自由な発言ができる風土を醸成することです。

●少数意見を尊重する


ちょっと変わった視点で意見を述べれば、少数意見になります。そういう視点を無下にしないことです。イノベーションや革新的なものを生み出そうとするとき、そもそも多くの人は、その利点に気づいていないものです。つまり多数決や満場一致は、現状維持や過去の慣性の思考法であることが多いのです。

●ファシリテーターが進行する


会議はトップやリーダーなどの権威者が進行することが多いのですが、ファシリテーションスキルを磨いた人(もちろんリーダーでも良い)が進行することで、すべての人が、良く考え抜き、意見を交わせる、満足度の高い話し合いが実現できます。

●最後は満場一致でも良い

多くを語り尽くした上で、全会一致することは悪いことではありません。最善の策を意思決定できたと納得でき、後で問題が起きたとしても、再度、善後策を積極的に議論できるはずです。



さて、皆さんのチームは、満場一致の罠にはまらないために、どんな取り組みをしていきますか。

 

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