RICTEC事業部の山口です。
昨年からドライバー関係の2024年問題(トラック、バス、タクシー等)について述べてきましたが、2024年問題はドライバーに限った話ではありません。
そもそも2024年問題とは働き方改革関連法に伴う時間外労働の上限規制に関して、
長時間労働の背景に業務の特性や取引慣行の課題があることから、
時間外労働の上限の適用が5年間猶予が与えられた業種・職種の猶予期間が終了し、
規制対象になる2024年4月1日以降起こってくる一連の問題の総称になります。
5年間猶予が与えられた業種・職種は下記になります。
・自動車運転の業務
・工作物の建設の事業
・医業に従事する医師
・鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業
※出典:物流業界だけじゃない「2024年問題」の影響とは?(ランスタッド株式会社 2023年12月6日)
今回はこのうち「工作物の建設の事業」つまり建設業界の2024年問題について述べていきたいと思います。
建設業の今
2024年4月1日まで約1ヶ月と差し迫っている中、建設業界では働き方改革は進んでいないのが現状です。
その理由はいくつかあります。
①特有の下請構造
建設工事にはまず元請け業者がありその下に下請け業者がいるのが常です。
大きな工事になるほど下請け業者は多重構造増になります。
自社よりも上位の建設業者の都合に下請業者が合わせないといけないことが多いため、
工期などの兼ね合いによって、長時間労働を余儀なくされてしまうということになります。
②移動時間と労働時間の扱い
移動時間が労働時間になるかどうかによって、時間外の労働時間数が大きく変わってくるということです。
この移動にかかる時間は、労働時間になり得る可能性があります。
「可能性」というのは場合によって、労働時間になるものと、ならないものが存在するからです。
ポイントはどの時点で「会社の指揮命令下に入ったのか」ということです。
現状この移動時間については、そもそも労働時間としてカウントしていない企業も多く存在するため、
「実際」の労働時間は企業が考えている以上に長くなっている可能性があります。
③施工管理など技術者の労働時間
例えば元請業者として公共工事などをする際には、元請業者の技術者は工事の検査に使用するものとして、
膨大な検査用の書類を作成しなければなりません。
日中は現場に常駐しているため、書類作成時間は平日の夕方以降や土日になってしまい、
必然的に長時間労働になってしまいます。
④建設現場作業員の給与形態
建設業は天候に左右される業種も多いことから、
実際に働いた日分のみの賃金を支払えるように多くの企業が日給制を採用しています。
これが土曜日なども含めて働いた方が手取りも増えるといった思考になりがちで、
長時間労働を助長するシステムに陥ってます。
※出典:建設業「2024年問題」とは何かをわかりやすく解説、現場から「悲痛の声」が上がるワケ(SeizoTrend 2023年11月1日※会員限定記事)
多重下請け構造などは物流業界にも通じる部分があります。
物流業界と同様に建設業界も人材不足な業界です。
建設業界の対策
ここでは建設業界で実際に行われている人材不足への対策例を挙げていきます。
例①テクノロジーの活用による省人力化
資材搬送など、負担が大きいわりに単純な業務はロボットなどを導入して自動化することにより、
貴重な労働力を他の業務に割くことができ、けがなどのリスクも減少している例です。
現場ではICT端末(タブレット・スマホ等)を利用した連絡・管理を行い、
業務をスムーズにし適切な管理体制を整えることにも成功しています。
例②女性が活躍できる場面を増やす
検査工程にかかわる女性職員によるチームを結成しきめ細かいチェックを可能にする例です。
男女問わず利用できる育児休業制度やフレックスタイム制度を導入することで、
家事や育児、介護などをしながら働ける環境を整えています。
例③部門の垣根を超えた人材育成と配置を行う
資材部門や建築部門、土木部門、監査部門、営業部門など、部門別に配置を行うと、
専門性が磨かれる反面、業務の忙しさでばらつきが出てしまうという弊害があります。
そこで、部門を越えた柔軟な人材配置と人材育成を実施する例です。
資格手当の支給なども行い、多角的な知識・経験をもった人材の育成を推進しています。
例④特定技能外国人の受入れを行う
国が日本の人材不足解消を目的として、2018(平成30)年に可決・成立した改正出入国管理法により、
新たな在留資格として創設された「特定技能」
2019年4月より受入れが可能となっています。
特定技能の導入により、特に人材不足が顕著であると認められる分野において、
外国人労働者の就労が可能となりました。
建設分野もそこに含まれています。
この特定技能外国人を受け入れることで、人材確保をする企業も増えています。
特定技能は、一定の専門性・技能・日本語能力を有することが条件。
つまり、即戦力として就労可能であるということです。
技能実習2号を良好に修了した場合、技能実習から特定技能へと在留資格を変更することもできます。
そのため、在留期間を延長して働くことや、母国に帰国した技能実習修了者を
呼び戻して雇用することもできるようになりました。
※出典:建設業で人材不足が起こっている理由は?その対策も詳しくご紹介!(一般社団法人建設技能人材機構 2023年3月30日)
そもそも人材を確保するためには
前項で挙げた対策のうち①は該当しないですが、
②③④に関してはそもそも人を入れることをしないと始まりません。
ポイントとなってくるのが「可能な限り間口を広げる」ことだと思います。
例えば特に人材不足が差し迫っている施工管理職は、
地方においてシニア層の採用事例が増えてきました。
地方は都市圏よりも、さらに人材不足が深刻な状況にあります。
こうした背景から地方の建設会社とシニア層の施工管理経験者とのマッチングが成立し、
Uターン・Iターンの転職者を受け入れる事例が急増しています。
特に九州・北海道エリアでこの傾向が顕著です。
技術士資格を必須条件とする企業が多い建設コンサルティング業界でも、
「土木学科卒・土木施工管理経験があれば可」など採用ターゲットを広げる企業が出てきています。
最近では20代後半・化学系学部出身者を採用した建設コンサルティング企業の例もありました。
つまり何らかの形で建設に関係する知識を持っていれば、資格や学位、経験なしでも採用に至るケースがあるのです。
※出典:「2024年問題」に対峙する建設業界、差し迫る人材獲得のポイントは3つ(日経XTECH 2023年12月26日)
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