【説明会での企業PR】企業理念を「お題目」や、「お説教」にしないために

「企業理念」は学生に伝わりづらい
会社説明会は、学生にとって「その会社を最初に知る大切な場」です。だからこそ人事担当者は、自社の魅力を丁寧に伝えようと準備を重ねます。しかし、「説明会がまるで説法を聞かされているようだった」と学生から不満の声が出るケースも往々にしてあります。
具体的には、自社の理念を延々と話し続けるパターンです。理念自体は企業活動の根幹であり、伝えるべき大事な内容です。しかし、説明の仕方が抽象的で一方通行になってしまうと、学生は「自分ゴト」として受け止められず、「なんだか説教くさい」と感じてしまうのです。
では、どうすれば理念を“説法”ではなく“共感”に変えられるのでしょうか。
理念の裏側には必ず「自社が大切にしていること」が存在する
企業理念は、一見すると抽象的な言葉に見えます。しかし、その裏側には必ず「自社が大切にしているもの」という視点が隠れています。
たとえば、「人を大切にする」という理念。「よくある理念だよね~」と思うかもしれません。しかし、これらもよく考えてみましょう。なぜ「社会の発展に寄与する」ではなく、「自社で作る製品の価値」でもなく「人」なのでしょう?そこには必ず理由があります。
さらに、長く続いてきた企業であればあるほど、理念は単なる言葉ではなく、実際に現場で働く人たちによって日々実践されています。理念は空中に浮いているのではなく、「働く人の行動」として息づいているのです。
だからこそ説明会では、「なぜ、我々にとって“これ”は大切なものなのだろう?」を考え、その理由を学生に伝えることが求められます。
例:なぜ“人”が欠かせないのか
例えば、「人を大切にする」企業の理念の具体化に考えてみましょう。
理念を具体化するには、事業と人の関わりを結びつけて説明すると効果的です。
- 製造業の場合
自社が作るものは、世の中の「誰」の役に立っているのでしょうか?製品を使うのは、企業?家庭?どんなシーンが想定される?シーンに応じて、作るべきものや気をつけるべき性能・スペックは異なるはずです。この点で、「人」を大切にしていないと、よい製品は生まれないと言えます。 - 商社の場合
商社の場合、多くはお仕事にたくさんの人が関わっています。エンドユーザーは誰で、中継ぎにどんな会社がいて、仕入先は誰で、どんな業種の会社でしょうか?当然、その方々をまとめて、「誰かの課題を解決する」必要があります。こうした連関性をいかに表現するか?が大切。
なにごとも「なぜ?」が大切です。その説明が一貫していればいるほど、学生は「なるほど」と腑に落ちやすくなります。
理念を“制度や取り組み”に落とし込む
また、理念を具体的に伝えるには、「制度」「仕組み」「日常の取り組み」に結びつけて紹介するのも有効です。
例えば「オープンなコミュニケーションを大事にする会社」という理念なら、以下のような制度に表れます。
- 月に1回、必ず上司と行う1on1ミーティング
- 誰でも自由に参加できるアイデア共有会
- 社内チャットで役職を問わず意見交換ができるルール
学生は抽象的な理念よりも、「実際にどんな場面でそれが体現されるのか」を知りたいのです。具体例を提示することで、理念が「言葉」から「行動」に変わり、学生の共感を得られます。
「うちには制度なんてない」と思った時こそチャンス
採用担当者から「うちには特別な制度なんてない」と聞くことがあります。
しかし、実際に掘り下げてみると、理念を支える仕組みは必ず存在します。
- 朝礼で必ず全員が一言発表する → オープンな発言の場
- 新人には必ず先輩がついて教える → メンター制度の原型
- 忙しい時も「大丈夫?」「手伝おうか?」と声をかけ合う → チーム文化
こうした日常の取り組みこそが、理念を具体的に表しているのです。特別な制度がなくても、「人を大切にしている瞬間」を切り取れば、学生に伝わるリアルなストーリーになります。
学生のリアルな反応
実際、理念を抽象的に語るだけの説明会では、こんな感想が寄せられます。
- 「仕事内容が全然わからなかった」
- 「上から目線で説教されているように感じた」
- 「パンフレットに書いてあることの繰り返しだった」
一方で、理念を人や制度に結びつけて語った企業に対しては、
- 「理念がどんな形で実践されているのか具体的に理解できた」
- 「ここで働いたら自分はこう成長できそうだと想像できた」
- 「共感できる部分が多く、応募意欲が高まった」
といったポジティブな声が集まります。
まとめ
会社説明会で理念を語ることは大切です。しかし、それが抽象的で一方通行になってしまうと、学生には“説法”のようにしか響きません。
理念を本当に伝えるためには、
- 「理念の裏側には必ず人がいる」ことを示す
- 事業においてなぜ人が大切なのかを語る
- 日常の制度や取り組みへと落とし込んで具体化する
ことが必要です。
理念を「押し付け」ではなく「共感」に変える。そのために、説明会のメッセージを学生目線で再設計することが求められています。
最後に
もし「理念を伝えたいのに学生に響かない」と感じているなら、それは伝え方の問題かもしれません。
理念を人や仕組みにひもづけてストーリー化することで、学生に「働く姿」が見え、共感を呼ぶ説明会に変えられます。