物流業界の2024年問題~その3

「その1」、「その2」と物流業界の2024年問題について取り上げてきた当コラム。
前回は対策の第一歩として、人員確保の道を拓くことが大切だと締めくくりましたが、皆様のご意見はいかがでしょうか。
現場の労働力を確保し、経済の滞りを避けることは物流業界のみならず、荷主企業の売上げや一般消費者の生活を支えていくことにも繋がります。
今回のコラムではこうした関連企業や消費者にも視野を広げ、物流業界での2024年問題における社会的影響と、
民間企業が既に導入を始めている打開策についてご紹介をしていきたいと思います。
①荷主企業、日本の産業で起こる事態
前書きにも触れました通り、業界のドライバー不足が進み国の運送能力が低下すると、ビジネスに影響を及ぼすのは物流業界の関係者だけではありません。
荷物の配達を依頼する荷主や、荷主と契約をしている企業にまで影響することが予測されます。
では具体的にどんなことが考えられるのか、ここで例を2つ挙げてみましょう。
【1】到着日数の遅延
【2】売上減少や納期の延期が発生
【1】はこれまで当たり前のように期日に届いていた荷物が遅延するようになり、日付・時間指定サービスの継続が困難になることが考えられます。
場合によっては、運送会社のキャパオーバーにより案件自体を拒否されるケースも出てきます。
【2】については2024年4月以降、農産・水産品の出荷団体の試算で32.5%の輸送力が低下するという報告もされており、納期の遅延が懸念されます。
納期に変更が生じればその分売上げの計上時期もズレ込み、予定していた売上げが当月に立たない事態も出てくるでしょう。
こうした状況が長期的に続くと、年間を通した売上げの見込みが不透明になり、ビジネス全体に大きな影響が出ると考えられます。
②消費者消費者側で起こる事態
上記のようなケースが実際に起きれば、消費者の生活にも徐々に変化が出てくることは簡単に予想がつくでしょう。
便利だった当日・翌日配達サービスが利用できない、水産品・青果物などの鮮度が重視される商品の受け取りに厳しいルールが設けられるなど、
せっかく手に入れた快適な暮らしを手放さないといけなくなる可能性も大いにあります。
多忙で買い物に行けない日でも、朝にオンラインストアで商品を注文すれば帰る頃には家に届く。
旬の食材を気軽に注文して家族や友人と楽しむ。こうした便利で豊かな暮らしを送ることがもう難しくなってしまうとしたら、
消費者側からサービスへの不満が日常的に寄せられ、カスタマー対応に追われる可能性も考えられるでしょう。
③物流業界での新たな取り組み
こうした問題を未然に防ぐため、実は既に新しい試みを行っている民間企業や団体もあります。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、ここ改めてどのような取り組みを行っているのか、
おさらいできるように以下に詳しくまとめました。
【1】共同輸送の推進
ある調査によると、日本におけるトラックの積載率の平均は約40%というデータが出ています。
残り60%の有効活用により、ドライバー不足のなかでも配送の効率化を図ろうとしているのが「共同輸送の推進」。
複数企業の荷物をひとつのトラックで運ぶことで積載率を高め、一度により多くの荷物を輸送し、ドライバーの業務負担の軽減を目指せます。
また、トラックの使用台数や輸送費のカットにも貢献できると考えられています。
【2】トラック予約システムの導入
国土交通省によると、1運行あたりの荷待ち平均時間は1時間45分。
1時間以上の荷待ち時間が発生している企業は業界の半数以上にあたる55.1%というデータが出ています。
こうした待ち時間を減らし、ドライバーの拘束時間の削減に貢献できると考えられているのが「トラック予約システム」の導入です。
ドライバー毎に業務時間が整理されるため荷積みの際に渋滞が起きにくく、また進捗がひと目でわかるようにビジュアル化されていて便利なことから、
2024年4月以降ますます活用されることが期待されている当システム。
現在、複数の企業がこのシステムのパッケージソフトを販売しています。
【3】Airワーク採用管理によるによる採用支援
物流業界の2024年問題において、採用支援にいち早く名乗り出たのがHR分野で多くの実績がある「株式会社リクルート(以下、リクルート)」です。
リクルートは公益社団法人全日本トラック協会とタッグを組み、会員であれば無料で自社採用HPを作成できるAirワーク採用管理を軸にして採用支援プログラムを推進。
Airワークは自動で求人検索エンジン「Indeed」と連携できるため、これまで求職者の元に届きにくかった情報も届きやすくなります。
公益社団法人全日本トラック協会に加入する事業者のうち、9割以上が従業員100名未満の中小規模のため、
こうしたツールの活用で採用活動を最小限の手間で抑えることは業務の効率化に繋がるなどのメリットもあります。
④コンテンツのコンテンツの重要性
2024年問題の対策として現在、さまざまな手を打っている物流業界。
特にAirワークに関しては、人材確保という上で今後の大きな鍵となりそうです。
ただし、システムが立派であっても、それを使いこなせるかどうかが、同じ業界内でも大きな分かれ道になりそうです。
HPを無料で簡単に作成できる術を手に入れた分、どう中身を充実させていくか、求職者の心を惹きつけ応募まで繋げるか。
人を集めるには、そうした戦略が必要になってきます。
次回の最終回では、20年以上大手物流企業の採用をお手伝いしてきた飛竜企画ならではの視点で、
ドライバー採用に特化したノウハウをご提案させていただきます。