心理学をビジネスに活かそう!(12)結晶性知能

「最近、物覚えが悪くなったなぁ…」 「年を取ると脳は衰えるばかり・・・」 「やはり高齢者には高度な仕事をさせるのはむりなんじゃないか・・・」
そんな感覚をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ところが、最近の研究で、たとえ高齢者になっても、脳には「衰える部分」と「維持・強化される部分」があることが分かってきています。衰える知能は「流動性知能」、維持・強化される知能は「結晶化知能」と呼ばれます。
■流動性知能
神経系の働きで発揮される能力で、計算・暗記など、新しいことへの適応力に活かされる能力です。
スマートフォンやIOT機器などを使いこなすことは、若者にはたやすいことですが、高齢者になると難しいと感じる方も多いようです。これは、流動性知能は、年齢とともに低下していくためです。
■結晶性知能
それに対して、語彙力(ボキャブラリー)、または判断力や問題解決力といった知能は、年齢を重ね、経験を積み重ねることでむしろ強化されていく知能です。個人差はありますが、知識の蓄積や訓練によって、鍛えていける知能とも言えるでしょう。
■若者と高齢者の職場での共存
若年層者は、流動性知能にアドバンテージがあります。
体力にも優れ、またパソコンを使う仕事、短期記憶力も高いので、新しい知識の習得が必須な仕事に優れた能力を発揮します。
それに対して、中高年から高年齢者層は、結晶性知能を活かしていきたいものです。
中高年齢者層の人々は、豊かな経験や人脈を持っています。その経験を活かして、確からしい判断ができ、広い視野、また、深い思考が求められる仕事の成果で、若年層を上回ることが多くなります。
つまり、若年層と中高年・高齢者層のそれぞれの長所を活かしていくことで、補完し合う関係ができれば、お互いが共に活躍できるチームもできるようです。
■脳は若返る
かつては、加齢により一度死んだ脳は再生しないと信じられていたようですが、最近の脳科学者の研究により、脳細胞は加齢が進んでいても、まだまだ新たな細胞を生成できることが分かってきました。
人生100年時代と言われ、中高年齢者も長く働いていく時代。
生涯発達、リカレント教育、リスキリングなど、雇用する企業側も中高年齢者に役立つ学びの場を提供し、中高年齢者自身も、自分の知力を維持・向上するために、いろいろなことに好奇心を持ち、チャレンジしていく日々にしたいものですね。