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「WHY」が人を動かす?「ゴールデンサークル理論」~心理学をビジネスに活かそう(25)

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「WHY」が人を動かす?「ゴールデンサークル理論」~心理学をビジネスに活かそう(25)

あなたの、その「やる気」はどこから生まれましたか。
あなたの気持ちを高揚させ、行動を起こさせたものは何ですか。

■「ゴールデンサークル」理論

人の行動を生み出すモチベーションについては、様々な研究がありますが、中でも興味深い理論の一つが、「ゴールデンサークル」理論です。サイモン・シネック氏が2009年のTEDトークにて紹介し、著書「WHYから始めよ!」はベストセラーとなりました。

「ゴールデンサークル」とは、「何をしている」「どのようにするのか」ではなく「なぜするのか」を強く語ることが共感を生み、人の行動を促すという理論です。

■人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされる

WHAT(何をやるのか)は、誰でもすぐわかりますし、HOW(どのようにやるのか)をわかる人も多く、言語や数字にしやすいので、製品を売り込むときは、一生懸命ここを説明してしまいます。

ところが、人間の脳は、論理的・分析的思考をつかさどる「大脳新皮質」でこれらのメッセージを受け取りますが、この部位は、残念ながら感情や意思決定を担当していません。


一方、「大脳辺縁系」と呼ばれる内側の脳は、感情や行動決定に強く関わっており、「WHY(なぜやるのか)」で語られた「信念」や「意味」「存在価値」といったメッセージを受け止め、感情や欲望を作り出し、行動を促します。

つまり、まず、脳の内側から、そして外側に向かってコミュニケーションをしていくことで、人々を鼓舞し、感化させ、その気にさせることができると言うのです。

サイモン・シネック氏によれば、Appleなどのイノベーティブな企業は共通して、「WHY(何のために)」→「HOW(どうやって)」→「WHAT(何を)」の順に人の脳の構造に合わせてメッセージを発信しているため、強いインスパイアを提供できるとも語っています。

ちなみにiPhoneシリーズの累計販売台数は、2023年1月時点で、23億台を超え、現在も年間2億台超が出荷されているようです(調査会社IDC調べ)。

新製品購入で「イノベーター」「アーリー・アダプター」と呼ばれる顧客層は、その製品や企業ブランドの「WHY(何のために)」に動機づけられ、直観的に、いち早く製品を購入します。

例えば、新しいiPhone発売初日に何時間も並んで購入してくれる顧客層です。彼らは、信じることにより突き動かされて、直観的に決めることを好み、誰よりも一番乗りをしたいのです。「WHAT(何を)」ではなく「WHY(なぜ)」に動かされるわけです。

それに対して「アーリー・マジョリティ」層はとても慎重です。
誰かが買って、使ってみてから、その評判によって購入を決めようとするからです。

この「キャズム」と呼ばれる谷をどう乗り越えるかが、イノベーションでは重要な課題です。

■人材採用で

業界・製品、業績が良い「WHAT(何が)」、待遇が良い、働く環境が良い「HOW(どうやって)」という理由だけで採用した人は、処遇やお金のために働く人で終わるかもしれません。



それに対して、企業や経営トップの信念や在り方などの「WHY(なぜ)」に共感し、信じてくれる人を採用すれば、一緒に汗や涙を流し働こうとしてくれるかも知れません。

■キャリア意思決定で



マーク・L・サビカスの「キャリア構築理論」でも「WHY」「HOW」「WHAT」を重要概念として取り上げています。それまでの理論から、個人の「パーソナリティ特性」に基づき、どんな仕事を選ぶのか「WHAT」、そして、「キャリア適応力」(職業探索のプロセス)をどのように強化していくか「HOW」が必要だとしています。

さらに、「WHY」(なぜあなたはその仕事を選ぶのか)、つまり、あなたにとって最も大切なこと=「ライフテーマ」から自分を見つめ直し、自分のキャリアストーリーを「意味」あるものと捉え、キャリア選択をすることの重要性を訴えています。

これまでの、そしてこれから働く「意義」「意味」を理解してこそ、働きがいのあるキャリアを歩んでいけるという考えです。


■給与・待遇が載っていない求人マッチングサイト

Wantedlyという仕事情報サイトがありますが、そこには、いわゆる待遇情報が記載されていません。載っているのは主に次の3つの事柄です。

●なぜやるのか
●どうやっているのか
●なにをやっているのか

まずこれを理解してから、「企業を見に行ってみる」など、次のステップへと進めるしくみのようです。

運営会社のサイトには、“究極の適材適所により「シゴトでココロオドルひとをふやす”、

利用企業向けのサイトには、"Wantedlyは、あなたの会社が掲げる「想い」への共感を通じて、条件だけでは動かない優秀な人材にアプローチ"と書かれています。

 

■組織もチームも人も「WHY(なぜ)」から語ってみる

これまで見てきたように、マーケティングでも人材採用でも、個人のキャリア選択にも、「WHY」をコアとしたゴールデンサークルが活かせると思われます。

「なぜ、私はここにいるのか」をきちんと語れる人やチームでありたいですね。



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