「思っていた仕事と違う」
「自分だけできていない」
「わからないけど、質問しづらい」
「自分の居場所がないように感じる」
「疲れている」
4月の入社から気を張り詰めさせて頑張ってきた新入社員が、口には出さないものの、「どうもうまくいかないな…」という気持ちを抱えていたら…。
こんな時、新人を注意深く観ている人は、小さな兆候に気づきます。
やがて離職につながるような小さな芽にいち早く気づき、早く摘んでおくことで、「自己効力感のなさ」や「不安」「孤立」といった心配を払拭することができます。
不安が軽減され、モチベーションが上がれば、やや難しいことにも挑戦し、仕事のスキル習得に邁進し、信頼関係、人間関係を前向きに築ける人になるでしょう。
こうした「早期離職防止」のための働きかけは、当然「早期戦力化」とつながっていきます。
そのために役立つのが「メンター・チューター」による育成支援です。
メンター・チューター導入のススメ
1.メンター
メンターは、仕事も人生にも経験豊富な存在として、新人の成長・キャリア形成を支えるために、主に次の役割を担います。
(1)心理的サポート
・相談に乗り、直属上司には、言いづらい悩みや不安の解消を手伝う
・自信を持ってものごとに立ち向かうモチベーションを支える
(2)職場適応サポート
・孤立を防ぎ、組織内の人と良い関係を築くための人間関係の橋渡し
(3)キャリア支援
・新人が「強み」を発見し、活かし方を意識できるようにする
・どんな将来を歩んでいくか、一緒に考えてくれる
やや高い視座に立ち、目先の業務のことよりも、中長期的な関わりを意識することが大切です。そのため、新人とは直接仕事で関わらない他の部署の先輩が担当することもあります。
2.チューター
チューターは、業務を直接指導することで、新人を教育するために、主に次の役割を担います。
(1)実務指導(OJT)
・仕事の役割分担
・実践指導、業務習得支援
・報連相などを通じた進捗管理
(2)組織適応
・仕事の進め方や社内ルール、社内システムを教えること
・円滑なチームワークを築かせること
チューターは、実務に密着し、仕事の技術・技能や進め方を「教える」ことが役割の中心です。
密着指導が不要となるレベルまでの短期的なスパンでの指導であり、新人を指導できる仕事上の知識・経験が求められます。同じ部署の人が担当することが多いです。
このように、それぞれの役割の違いがありますが、人員の都合で、別々の社員を手当できない場合は、メンター・チューターを一人の先輩が担うケースもあります。
いずれにしても、新入社員を指導する方には、このメンター・チューターに必要な関わり方を事前に習得しておくことが望ましいと思われます。
3.メンター・チューターが知っておきたいこと
(1)新入社員について理解しておくこと
メンター・チューターに任命される人は、さまざまです。年齢も近い若手社員(新卒2・3年目)の場合もあれば、親子くらい歳の離れた社員が担うこともあります。若手社員は接しやすく、熟年者には経験や考えの深みがあるなど、それぞれに良い点がありますね。
親身な指導・支援のためには、新入社員は「どう感じるか」「何を望んでいるか」「何に困るのか」を認識しておくことが重要です。
それは、今、自分がどんな指導や支援をすれば効果的かを知るための前提になるからです。
Z世代と言われて久しい若年層と年代が離れている人は、世代による感じ方の違いについて学んでおくことも役に立つでしょう。
(2)新人が伸びるOJT指導フレーム
例えば、現場指導を中心とするチューターの役割を担う人には、大切な考え方があります。
それは「育成の意図」です。
行き当たり場当たりの役割分担や指導に終始しては、大した育成効果は望めません。
どんな仕事を与えて、そこで何を学ばせて、どのように成長させるかを「意図的」に行えるかどうかが新人の成長を左右します。
また、人が学習するプロセスを知っていることも必要です。
人が学びたくなるメカニズムを応用することで、教えが腑に落ち、指導が成果に結びつく確率が飛躍的に高まります。
(3)上手なフィードバック(ほめ方・指摘のし方、叱り方)
仕事の熟練者は、日常、「叱られる」ことはないし、逆に「ほめられる」ことも少ないのではないでしょうか。
しかし、新入社員たちは、違います。失敗してダメ出しされたくない、でも、仕事を早く覚えたい。
チューターの「ほめる」「指摘する」「叱る」の関わりは、自己効力感、自己成長感、モチベーションに大きく関わってきます。
(4)自立・自走のために/自分で考え、行動する新人を育成する
当たり前ですが、メンター・チューターは時限的な役割です。早期に独り立ちしてもらうことが必要です。
つまり、言われたことを忠実に実行する新人から、自立し自走できる社員に育成することが新人時代から求められています。
そのためには、戦略的な育成方針を持って接していくことも重要です。
昨今では、新入社員の採用競争も激しくなっています。
苦労して採用にこぎつけた新入社員・若手社員が成長して、事業を推進する仲間として活躍してもらうために、入社1年目は、とても大切な時期だと強く感じています。
私がメンター・チューター育成プロジェクトを担当させていただいている企業様では、目立った早期離職もなく、若い世代層の戦力化に成功されています。
この機会に、新入社員を取りこぼさず、早期戦力化を実現するために、メンター・チューター制度を導入いただいてはいかがでしょうか。
次週は、「新入社員は何を考えているか」をテーマにします。
文/研修・セミナー講師、国家資格キャリアコンサルタント 金津 豊
▪️新入社員の早期戦力化のために(全6回)
(3)新入社員は何を考えているか
(4)新人が伸びるOJT指導フレーム
(5)上手なほめ方・叱り方、フィードバックの仕方
(6)新入社員の自立・自走のために
新入社員・若手社員の成長と定着に必要なOJT指導スキルを見直してみませんか。自ら考え行動し、自己成長感・自己効力感を育む指導の仕方を身に着けることで、早期離職防止、早期戦力化を応援する研修です。
▶研修のお問い合わせ・ご相談
<執筆者 バックナンバー>
★心理学をビジネスに活かそう!(1〜29)
★社会人に求められるもう一つの能力「感情知能(EQ)」(1〜12)
(9)もう「空気読めない」と言わせない!【モニタリング力を磨く(1)】
(10)人の気持ちの読み取り方【モニタリング力を磨く(2)】